青春あやまち論anotherstory 【黒子のバスケ】
第17章 守る騎士
*
「鈴佳!待つアル!!」
走って逃げていた私だったが、手足の長い劉にアッサリ捕まってしまった。
「離…っ」
「離したらまた逃げるアル」
悔しさと悲しさが入り混じる顔のまま、劉を睨み上げた。
すると、劉は一つ溜め息をついて、私の顔を真っ直ぐに見据える。
「鈴佳。もういいアル」
「いいって何が」
「藍川と桃井の影に怯えなくていいアル」
「!」
その的を射た言葉に、私の顔を僅かに歪む。
「鈴佳は『強くなければ』『藍川と桃井に勝たければ』って思ってるかもしれない。けど、それは鈴佳の首を絞めることでしかないアル。鈴佳が一番よく分かってるはずアルよ」
「……」
私は劉から目を背けた。
劉、と言うよりは現実から、と言った方がいいかもしれない。
「もう…『女王』なんて柵から解放されてもいいアル」
「だからっあの二人に勝たなきゃ、私は…!」
「もうあの二人に拘らなくていいアル。鈴佳は、ただの『陽泉のマネージャー』で、藍川と桃井に敗けた『女王』じゃないアル。鈴佳は一人の『枝尾鈴佳』アル」
「!」