青春あやまち論anotherstory 【黒子のバスケ】
第17章 守る騎士
私はただただ呆然と立ち尽くすことしか出来ない。
「鈴佳」
そんな私の背中を押したのは、福井ちゃん。
「鈴佳はよくやった。負けたのはお前のせいじゃない。俺らの実力不足だ」
「福井の言う通りアルよ。ワタシたちはまだまだこれからアル」
あの時とは違う言葉。
だけど…その言葉でも、私にはあの時のように、私を責めてる言葉に聞こえてしまう。
違う…そんなことを言って欲しいんじゃない。
そんな言葉が聞きたいワケなんかじゃ…!!
「鈴佳」
ゆっくりと、私の名前を呼ぶ福井ちゃんに目を向けた。
「今まで支えてくれてありがとな」
その言葉に、私は目を見開く。
「ワタシからも。鈴佳、いつもありがとう。次こそはワタシたちが勝つアルよ。だから…笑って欲しいアル」
劉も微笑みながら私の顔を覗き込んで言う。
……”ありがとう。”?
たった一言なのに。
たったそれだけなのに。
その一言を言われた瞬間。
何故だか、私の中の負の感情が少しずつ消えていくのを感じた。
「ほら、行くぞ」
「ワタシたちにはまだまだ鈴佳が必要アル」
福井ちゃんに背中を押され、私は歩き出した。
零れそうになる涙を堪えて。
――― ああ、そうか。
私はずっと…「ありがとう」って、言って欲しかっただけだったんだ…。
「全員よくやった!帰るぞ!!」
「「「ウス」」」
雅子ちゃんの声で、陽泉一同はベンチを離れた。