青春あやまち論anotherstory 【黒子のバスケ】
第15章 アイツ…
そんなアゴリラに、福井ちゃんはポンと肩を叩く。
「…そんなことねぇって。気にすんなよ。バスケやってようがやってまいが、お前はモテねぇよ」
「酷すぎる!!」
な?といつもの調子で言う福井ちゃん。
「とりあえず、そのモミアゲとアゴやめた方がいいアル」
「アゴやめるって何!?」
「整形しか道は残ってないよ」
「そんなにアゴ割れてるのダメ!?」
福井ちゃんに便乗した劉と私も、アゴリラに辛辣な言葉を並べる。
「それより、お菓子買ってきていい?なくなっちゃった」
そして、イジる気すらない我らがエース様。
見事な私たちの連携プレイに、アゴリラは「もうやだよ、このチーム。主将嘗めきってるよ…」と涙を流しては、肩を震わせる。
「はいはい。ふざけるのもそこまでだ」
終始のつかない、この緩い緩い空気を裂いたのは、雅子ちゃん。
「偵察班から誠凛の映像を受け取った。すぐにホテルに戻るぞ」
ケースに入ったDVDを見せながら雅子ちゃんが言う。
それと同時に、一気に引き締まる選手たちの顔。
「(誠凛ねぇ…全くノーマークだったけど、まさかここまで来るとは思わなかったよ)」
私としても、楽しみではある。
そこまで仲がいいワケでもないが、同じ『キセキの世代』の影に隠れた鉄平と戦うのは久しぶりだし。
新たに出来た私の敵、相田リコを早速潰しにかかるのも悪くない。
そして、私が誠凛の中でも最も叩きのめしたい…黒子テツヤ。
雅子ちゃんの手に持たれたDVDを目に、私の口角は妖しげに上がってしまう。