青春あやまち論anotherstory 【黒子のバスケ】
第15章 アイツ…
目の前に…憎んでも憎みきれない藍川が居る。
なのに私は、私には絶対に越えられない目の前のアイツの存在に、一瞬畏怖を感じたのだ。
「まぁ…今吉さんの敵は私が討っといてあげるよ。ついでに藍川も」
「それ、逆ちゃうか?わしらの敵の方がついでやろ」
「ははっバレた?」
桃井も直接潰してやりたかったけど、負けてしまったモノは仕方ない。
それと同時に、私には新たな敵が増えた。
ついでだ。
まとめて叩きのめすのも悪くない。
「ほら、桐皇の皆待ってんじゃないの?最後までしっかり主将やりなよ」
フッと笑いながら、私は「それでも」と付け加えた。
「もう少し泣きたいんだったら、胸でも貸してあげようか?」
「…それは遠慮しとくわ」
力なく笑う今吉さん。
その隣で諏佐さんも笑った。
二人の目は、もう真っ赤だ。
私は、「それは残念」と笑い、踵を返す。
「じゃあ、私は帰るとするよ。……今吉さん、それと諏佐さんも。お疲れ」
明後日からはうちも試合が始まる。
おそらく、今日は宿泊先で明後日の対戦校の分析があるんだろう。
私もそれに同行しなければならない。
すすり泣く声を自分の耳に残しながら、私は体育館を出た。