青春あやまち論anotherstory 【黒子のバスケ】
第15章 アイツ…
*
「その手に持ってるジャージは飾り?風邪ひくよ」
人目のつかない静かな廊下。
そこに響くすすり泣く声。
試合に負けた今吉さんと諏佐さん。
二人は、汗が引いて冷たくなっていく体を気にすることもなく泣いていた。
「……なんや、鈴佳。慰めにでも来てくれたんか?」
「そんなワケないじゃん」
私は漏れそうになる声を抑えながらに泣く二人の横の壁にもたれた。
「さっきさ。藍川を見たよ」
悔しんだろうな。なんて他人事のようなことを思いながら、ここに来るまでに見た憎たらしいアイツの姿を思い出し、私は呟く。
「ずっと。見つけたら、その瞬間に叩き潰してやろうって思ってたけど…案外出来ないモンなんだね」
「きっと今吉さん、泣いてるんだろうなぁ」と思い、一人でこの人の姿を探していると、見つけた藍川。
悔しいほどに整った顔、小柄な体…見間違えるワケもなかった。
一人、洛山のジャージをはためかせながら飄飄と歩くアイツ。
それを目に映した時…一瞬だけ、私は固まった。