青春あやまち論anotherstory 【黒子のバスケ】
第3章 キライだ
ここは秋田県、陽泉高校。
そして私はここの生徒。
この春からは二年生になる。
「鈴佳。おはようアル」
「ああ、劉。おはよう」
隣の席に着くのは劉偉。
中国からの留学生で、2mを超す長身。
語尾に「アル」をつけて話すのは、いたずらっ子な先輩の変な入れ知恵によるもの。
「どうしたアルか?浮かない顔アル」
「別に…」
「そんなに嫌アルか?『キセキの世代』が入部するのは」
「……」
心配そうに私の顔を覗き込む劉から視線を反らし、私は窓の外を見上げる。
『キセキの世代』。
私たち一つの下の世代で、5人の元帝光中の天才バスケット選手たち。
今日、そのうちの一人…紫原敦が、この陽泉高校に入学する。
勿論。
バスケ推薦で入学するのだから、バスケ部に入部するのだが、私は心底憂鬱だ。
「いつまで拗ねるつもりアル。もうずっと前から決まってたことアルよ」
「拗ねてなんかない」
「嘘つきは泥棒の始まりアル」
そんなことを言われたって、嫌なものは嫌なのだ。
去年の暮れに、監督からこの話を聞いた時は、そりゃもう猛烈に反対したし、荒れ狂った。