青春あやまち論anotherstory 【黒子のバスケ】
第15章 アイツ…
案の定、存在を思い出したばかりの黒子は、青峰との一対一で呆気なくスティールでボールを奪われ、その後のパスも通ることなく、ベンチに下がった。
「流石桃井…ってとこね。黒子の技のタネも全部お見通し…」
「いや」
私がそう呟いていると、紫原がその言葉を遮った。
「峰ちんは、さっちんの情報を元に動いたりしてないと思うよー」
「は?」
「あれは、野性って感じだねー。峰ちん自身の直感で動いてる」
「……」
紫原の言葉に、私は言葉を失い、コート上の青峰に目を戻す。
桃井の情報ナシで、こんなプレイを…?
「(なんてバスケセンスなんだよ…『キセキの世代』エース…)」
恐ろしい。
その一言に尽きる青峰の姿。
だが、もっと私が恐ろしく感じるのはその後のことだった。
黒子がベンチに下がった直後の青峰と誠凛10番の一対一。
青峰の勝利に見えたその一連の流れ。
「!?」
「何っ!?」
しかし、青峰がシュートを放ろうとしたその背後から、その10番は青峰に追いつき、シュートをブロック。
思わぬ出来事に、私だけでなく福井ちゃんたちも声をあげた。
「誠凛の10番…やるな…」
「あの青峰に追いつくなんて、相当なバスケセンスを持っとるようじゃな」
「そりゃそうですよ」
「?」
福井ちゃんとアゴリラが口々に言っていると、氷室が楽しげに目を細めながら言う。
「アイツは俺の弟なんですから」
「弟…?」
「前に言ってた奴アルか?」
「そうだよ」
氷室に言われ、私はその誠凛の10番に目を向ける。