青春あやまち論anotherstory 【黒子のバスケ】
第15章 アイツ…
誠凛ボールから始まった試合だが、今吉さんのスティールから先制点は桐皇。
それまでは、何てことなかった。
だが、私は次の瞬間に目を見開く。
「……っ」
青峰の手を弾くパス。
どこかで見覚えのあるそれに、見覚えのある姿。
「アイツ…っ!!」
「鈴佳?急に立ち上がってどうした?」
間違いない。
誠凛の11番…よく目を凝らさないと見失いそうな影の薄さ。
アイツは間違いなく、帝光の15番だ。
私の最後の全中決勝で、悉く試合の流れを変えた張本人。
「…枝ちん、思い出した?」
立ち上がった私に、氷室と劉を挟んで紫原が問いかける。
「何で言わなかったの」
「思い出したら、こうなるって分かってたから言わなかったんだよ。メンドーだし」
「は?」
「てか、言ったところで思い出したの?俺、散々ヒントあげてたつもりだけど?」
きっと、私と紫原にしか分からないやり取り。
私たちに挟まれた二人は勿論、その場の部員全員が「何事だ」と、私たちの様子を窺う。
「流石に本名言われたら思い出したわ!アイツ…黒子テツヤでしょ!?帝光の『幻の六人目』の!!」
「「「えっ!?」」」
私の言葉に、話を聞いていた全員が驚愕の声をあげた。