青春あやまち論anotherstory 【黒子のバスケ】
第14章 雪ウサギ
考える気力さえも残っておらず、ただ打ちひしがれていると、そこへ漸く氷室と紫原が戻ってきた。
…隣に小さな男の子を連れて。
「本当にありがとうございました!!」
「別にー何もしてないしー」
なんとまぁ。
紫原が連れてきたその男の子が、我々が探していた「あっくん」だった。
保育士さんたちは、紫原にすっごく感謝していたが、ついでに私たちも労わってほしい。
今までの努力は一体なんだったんだ。
「ねぇ、君も『あっくん』って言うの?」
「え?う、うん…」
「そっか…」
紫原は連れてきた「あっくん」に小さな声で問いかけた。
そして、これまた小さな声でそうぼやきながら、灰色の空を仰いでは目を閉じる。
…「君”も”」ねぇ…。
前に一度だけ、紫原は藍川から「あっくん」と呼ばれていたと聞いたことがある。
おそらく。
空を仰ぐその瞼の裏には、自分を「あっくん」と呼ぶ、想いを寄せる一人の少女の姿を映しているのだろう。