青春あやまち論anotherstory 【黒子のバスケ】
第10章 奪われた
「なーにー?昨日あんなこと言ってたくせに辞めないのー?」
そしてコイツも私のとこへやってくる。
心底腹立つ、超絶面倒なコイツが。
「アンタに関係ある?」
「別にー。どーでもいーしー」
「コラ、アツシ。そんなことを言うために来たんじゃないだろう?」
紫原の隣に立った氷室が諌める。
そんなことって…コイツが言うことはそれしかないじゃん。
今更何も思いませんよーだ。
「……ごめん」
…は?
小さく聞こえた声に私は耳を疑った。
大事なことなので、もう一度言う。
は?
「IHで言ったことも。昨日言ったことも。ごめん」
今起こっている事態を信じられずに、私は目を見開いて紫原を見た。
「俺も…WCでは逃げないからさ…その……はい、これ」
「……」
「な、仲直りのシルシ!!」
差し出されたのはまいう棒。
紫原がお菓子を誰かにあげること自体驚きだが、仲直りをしようと思っていることの方が驚きだ。
ああ、今日で地球は滅亡するのか。
「渡したからね!あ、でももう藍ちんとさっちんのこと悪く言わないでよね!」
私にまいう棒を押し付けると、紫原は大きな足音を立ててコートへ戻る。
「…何なの、アイツ」
「言っただろう?アツシは謝りたがってるって」
「それでも仲直りの印がまいう棒って…」
しかも一本。
ケチ臭い。
「アツシらしいじゃないか」
ハハッと笑いながら氷室も紫原の後を追う。
一体何なんだ、あのコンビ…。