青春あやまち論anotherstory 【黒子のバスケ】
第10章 奪われた
そんなことを思いながらも今日の練習は始まる。
「枝尾。来てたのか」
少し遅れて雅子ちゃんが体育館に入ってきた。
私が居ることを確認した雅子ちゃんは、安堵の息を吐く。
「…まぁ…劉に言われたし…」
「そうか…」
そう言って雅子ちゃんは私の隣に並んで立つ。
「辞めないで良かったよ」
雅子ちゃんの言葉に、私は思わず振り向いた。
まさかあの雅子ちゃんがそんなことを言うなんて…。
私の顔を見た雅子ちゃんは、私に向かって珍しく微笑む。
これは超レアすぎる。
「ところで枝尾」
だが、それも一瞬のことだった。
いつもの厳しい表情に戻ると、雅子ちゃんは口を開く。
「一週間以上も部活をサボるとはどういう了見だ」
「え」
「お前がいない間のマネージャー業は誰がやるんだ」
「え…だから…え?」
意地の悪い顔を見せる雅子ちゃん。
と同時に引き攣る私の顔。
「たっぷり仕事は残ってるぞ」
やっぱり鬼だ。