青春あやまち論anotherstory 【黒子のバスケ】
第10章 奪われた
「ホント。くっそ腹立つくらい憎たらしい兄貴なんだけど…一回だけね?小さい頃にこうしておんぶしてくれたことがあんの」
一人で時間も忘れて公園で遊んでいると、いつの間にか辺りは真っ暗。
はやく帰らなきゃ、と思っても「その木陰から何か出てきたらどうしよう」「誰かに襲われたらどうしよう」…と色んな不安が頭を廻り、幼かった私はその場で泣き出した。
泣き出したところでなんの解決にならないことは分かっていたが、どうしようもなく心細かった。
『鈴佳』
『おにいちゃん…』
『何やってんだよ。ほら、帰るぞ』
『うん…』
『今日は特別におぶってやるから』
その時に兄が迎えに来てくれて、泣き続ける私をおんぶして家まで連れて帰ってくれたのだ。
「今でもね…心細い時に誰かにおんぶしてもらうと、安心するんだよね…」
「…ワタシは鈴佳の兄じゃないアル」
「知ってるよ」
少し拗ねたような声で言った劉に、私は笑った。
「心細いアルか?」
「え?」
「一人になった気がして、心細いアルか?」
今私が見えるのは劉の後頭部だけ。
だから劉がどんな顔をしてるのかなんて知ることもできないけど…その声から心配そうな顔でもしてるんだろう、と言うことが窺えた。