• テキストサイズ

青春あやまち論anotherstory 【黒子のバスケ】

第10章 奪われた




「ホント。くっそ腹立つくらい憎たらしい兄貴なんだけど…一回だけね?小さい頃にこうしておんぶしてくれたことがあんの」


一人で時間も忘れて公園で遊んでいると、いつの間にか辺りは真っ暗。

はやく帰らなきゃ、と思っても「その木陰から何か出てきたらどうしよう」「誰かに襲われたらどうしよう」…と色んな不安が頭を廻り、幼かった私はその場で泣き出した。

泣き出したところでなんの解決にならないことは分かっていたが、どうしようもなく心細かった。


『鈴佳』

『おにいちゃん…』

『何やってんだよ。ほら、帰るぞ』

『うん…』

『今日は特別におぶってやるから』


その時に兄が迎えに来てくれて、泣き続ける私をおんぶして家まで連れて帰ってくれたのだ。


「今でもね…心細い時に誰かにおんぶしてもらうと、安心するんだよね…」

「…ワタシは鈴佳の兄じゃないアル」

「知ってるよ」


少し拗ねたような声で言った劉に、私は笑った。


「心細いアルか?」

「え?」

「一人になった気がして、心細いアルか?」


今私が見えるのは劉の後頭部だけ。

だから劉がどんな顔をしてるのかなんて知ることもできないけど…その声から心配そうな顔でもしてるんだろう、と言うことが窺えた。

/ 463ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp