青春あやまち論anotherstory 【黒子のバスケ】
第10章 奪われた
劉は繋いでいた手を離すと、私の前に屈みこんだ。
その背中に私は飛び乗る。
「わぁっ…たかーいっ」
「当たり前アルよ。どれだけ身長差が有ると思ってるアルか」
いつもより随分と高い視線。
いつもより近く感じる夜空。
懐かしさが溢れ出る。
「あのさ…私、五つ上の兄貴が居るんだけど」
「初耳アル」
「初めて言ったからね」
クスッと笑いながら、ひと昔前の記憶を語る。
「その兄貴は何でもできんの。勉強もバスケも…私とは大違い。いっつも周りに比べられてた。だからかな?仲はそこまで良くないんだ」
五つ上の私の兄は、誰からでも認められる存在。
今も東京の某有名私立大学に在籍している。
「兄貴は誰からでも認められてて…何でも簡単にやってみせんの。そんな兄貴が羨ましくて…今思えば、憧れてたのかもしんないなぁ…でもさ、兄貴は出来の悪い私のこと嫌いだったみたいで、小さい頃はよくイジメられたよ。それで私も兄貴のことが大っ嫌いだった」
兄との思い出を振り返ってみても、いい思い出なんてほとんどない。