青春あやまち論anotherstory 【黒子のバスケ】
第10章 奪われた
別に止めて欲しいんじゃない。
アッサリ辞めさせてくれるのなら、それが一番いいに決まってる。
でも、まぁ…ここまでアッサリしてると、ホント。
今までの私って何だったんだろう…って、笑えてきちゃうなぁ…。
「俺はもう帰るし」
「待つアル!」
「劉。俺が追いかけるよ」
スタスタと私たちに背を向けて帰っていく紫原を氷室が追いかけて行った。
だが、氷室は数歩進んだところで一度立ち止まる。
「鈴佳。俺は反対だよ。その話を聞いた以上、簡単に鈴佳を辞めさせるワケにはいかない」
そう小さく呟いて。
去っていく二人の背中を見つめ、私は自嘲気味に笑う。
氷室はああ言ってくれたけど、その去っていく二つの背中はあの日にどことなく重なった。
「…そろそろわしらも帰るか。枝尾たちの門限の時間もある」
「そー…だな…」
アゴリラが時計を見ながら言うと、確かに時刻は九時を回っていた。
寮の門限は十時。
余裕を持って帰れる時間だが、この場にこれ以上居たくないのが本音だろう。
「じゃがな、枝尾」
私がベンチから腰を上げると同時に、アゴリラが言う。