青春あやまち論anotherstory 【黒子のバスケ】
第10章 奪われた
…ははっ
こんな時まで…藍川と桃井のこと、か…。
「紫原」
やっぱアンタとは分かり合えないや。
ううん。分かり合いたくない。
もう怒ったり反論したりする気力さえもなかった。
「アンタにとっては”たったそれだけ”のモノかもしれない。けどね?私にとっては”かけがえのない”モノだったんだよ」
それを奪われた直接的原因が私だったとしても。
私の弱さ故だったとしても。
「紫原が藍川を大事に思うくらい、私もあのチームが大事だった」
もう戻らない過去。
突き刺さったままの言葉。
大好きな藍川を赤司に獲られたアンタなら…少しは分かるんじゃないの?
「ねぇ…知ってる?アンタらに負けた後、鎌田西出身でバスケ続けてるの…私だけなんだよ」
皆…辞めた。
帝光に負けた後、続ける人なんて誰もいなかった。
翔太と颯太も…去年の夏に電話を一つくれた時に、そう私に告げた。
「だからさ…私ももういいでしょ?」
もう…私も解放してよ。
バスケという名の呪縛からさ。
「…辞めたいなら勝手に辞めればいーじゃん」
「紫原!何言ってるアルか?!」
紫原の突き放すような言い方に、劉は声を荒らげる。