青春あやまち論anotherstory 【黒子のバスケ】
第10章 奪われた
私は全てを話し終えた。
今吉さんの言ったように、どこかスッキリしてる部分もあるかもしれない。
話して良かった、とまでは全然いかないけど…バスケとお別れするにはちょうど良いくらいだ。
話し終えた私が皆を見渡すと、全員が哀れなものを見る目で私を見ていた。
「枝ちん」
…いや、全員ではなかった。
ただ一人だけが、いつもと変わらない顔をしている。
「…試合に負けたくらいで藍ちんとさっちんのこと恨んでたの?何もされてないのに?」
「アツシ?」
「奪われたって…たったそれだけじゃん」
「オイ、紫原。やめろ」
「藍ちんは…華純はもっともっと辛い思いして…ずっと一人で泣いてたんだよ?さっちんだってそう。二人共俺らの前では笑ってたけど…影では苦しんで泣いてたんだよ?」
「アツシ。いい加減に…」
「これ以上、華純とさっちんのことを悪く言うなら…いくら枝ちんでもヒネリ潰すよ?俺」
福井ちゃんとアゴリラが止めるのも無視して、紫原は真っ直ぐに私を見据え言う。
その真っ直ぐな目が、私には痛かった。