青春あやまち論anotherstory 【黒子のバスケ】
第3章 キライだ
*
翌日。
昨日の紫原の件で心底腹の立った私は、全く眠れず、眠れたと思っても忌々しい昔の夢まで見たお蔭で睡眠不足。
朝から不機嫌極まりない。
だから朝練はサボった。
「おはようアル」
いつものように隣の席に着くのは劉。
「……」
「不機嫌極まりないって感じの顔アル。折角可愛いのに勿体ないアルよ」
「それはどーも」
劉の言う「可愛い」はもはや挨拶レベル。
福井ちゃんの「女の子はとりあえず可愛いって言っとけ」なんて言う、とんでもない入れ知恵だ。
その証拠に、顔は全く「可愛い」って言ってないし、寧ろ「お前、面倒臭いアル」と言ってる。
「鈴佳。今日は…」
「行かない」
「昨日約束したアル」
「それでも行かない。てか部活辞める」
もう決めた、あんな奴のいる部なんて辞めてやる。
大体、私は自ら望んで入部したわけじゃないし。
「それはダメアル」
「劉には関係ない」
「はぁ…」
一切目を合わせずに、窓の外を眺めながら言う私に、劉はいつもながらに溜め息をついた。
「こうなったら仕方ないアル」
劉は独り言を呟き、携帯を取り出したかと思えば、誰かにメールを打ち始めた。
相手は聞かずともわかる。
間違いなく、ゴリラと福井ちゃんだ。
「いつも女王様の世話をするワタシの身にもなれアル」
それはご苦労なことですね。
わざと聞こえるように言った劉の言葉を、私は心の中で返した。