青春あやまち論anotherstory 【黒子のバスケ】
第9章 ナニコレ
「鈴佳ーっ」
私の部屋のドアをノックさるとともに聞こえてきた友だちの加奈子の声。
「いつまで引きこもってんのー?劉君心配してるよー?」
返事をしない私に構うことなく、加奈子は話し続ける。
「荒木先生も『はやく部活に来い』って怒ってるらしーし。いい加減顔出しなよー」
間違いなく、劉に言われてだろう。
この子は毎日のように私の部屋を訪ねてくる。
が、私は毎日それを居留守で無視してしまう。
「私、今日から暫く帰省するしー…帰ってくるまでには部屋から出てきててよねー?」
暫くすると、足音とキャリーバッグを引く音が聞こえ、加奈子がその場を離れたことが分かった。
帰省…ねぇ…。
実のところ、私は高校生になって地元を離れてから一度も帰省していない。
面倒だから。と言うのもあるが、辛い過去のあるあの町に帰るのは少々勇気が要る。
「暇…」
ここ一週間、引きこもったお蔭で夏休みの課題は終わった。
自室にテレビはないし、携帯の電源も切ったまま。
小説や漫画を読む気にもならないし、雑誌は先月のモノ。
完全に暇を持て余している。
「今何時…」
時計を見ると、午後七時ちょっと前。
なるほど…加奈子は夜行バスで帰省したのか。
にしても、お腹すいた…。