青春あやまち論anotherstory 【黒子のバスケ】
第8章 嘗めてる
少し額に汗が滲む劉の様子から、私が走り出した後から探し回っていたことが窺えた。
「ほら、試合も終わったから帰るアルよ」
「……」
「鈴佳」
私が劉の方へ歩き始めると、玲央が呼び止めた。
「あなたが辛い思いをしてきたことは知ってるわ。アタシたちだって同じよ?でもね。だからって、華純ちゃんや桃井ちゃんを恨まないであげて欲しいの」
「……」
「鈴佳があの子たちを恨んだって、鈴佳自身を追い詰めることにしかならないわ」
「鈴佳…もう行くアル」
「うん…」
『華純ちゃん』と彼女の名前を呼ぶ玲央。
玲央の言葉は痛かった。
心の傷をさらに抉るような痛みで、これ以上何も聞きたくなかった。
劉に手を引かれ、私はそのまま三人に背を向けて、会場を出て行った。