青春あやまち論anotherstory 【黒子のバスケ】
第8章 嘗めてる
ついにIHが始まった。
大会開始の前日のうちに開催地まで移動し、昨日は開会式のみ。
そして、今日から試合だ。
「全員気合を入れていけ!!」
「「「おっす」」」
初戦。
秋田からの長時間移動に諸々の仕事のお蔭で、全くやる気を失った私は、当然の如くベンチに入る気にもならずに、ギャラリーからその様子を窺っていた。
「ベンチに入りたくない」と言えば、はじめこそ雅子ちゃんに竹刀で叩かれ、説教を喰らったが、最終的には「ま、初戦だしな」と何とか承諾を得た。
だったらはじめから殴らないで欲しい。
「なんや。鈴佳ちゃうか?」
陽泉の初戦はホントに一方的。
全く相手に点を与えず、先程から点が入るのはこちらばかり。
その時に誰かに声を掛けられ、その人物は私の隣に座った。
「出たな、妖怪サトリ」
「誰が妖怪やねん。こないなとこで何してるん?」
「試合見てんの」
「そら見たらわかるわ。わしは何でお前がここに居るんかを聞いてんねん」
私の横に腰を下ろしたのは、桐皇主将の今吉翔一さん。
今吉さんとは、真の同じ中学の先輩だったことから知り合った。
ちなみに、「妖怪」「サトリ」というあだ名は真から聞いた。