第1章 水蜜桃の未来
「いかないの?だめだよ、だいちつれてくるってつばさにいったもん!」
「椎名に?椎名は何の仮装をしてるんだ?」
「えっとね、つばさはどらきゅらだって!まさきはおおかみおとこなんだよ!」
「ドラキュラに狼男か…ふむ、興味深いな。」
「ね、だいちもいこうよ!だいちのどらきゅらみたいな!」
「俺に仮装しろと?…まぁ、気が向いたらな。」
「やくそく、ね!」
にこっと笑う童女に青年は普段殆ど見かける事のない笑みで答える。童女は見慣れているというようにまた笑い返して、細く小さな掌で自分よりずっと大きな青年の掌を握りドアを目指す。童女に腕を引かれる形になる青年は「仕方ないな」と呆れつつ、口元には笑みが広がっていた。
「めぐみ、魔女の姿、似合っているぞ。」
「ほんと?」
「ああ。可愛らしいものだな。」
「だいちはかっこいいよ!はやくはやく!」
「今行く。」
引かれる手は十年後、将来を誓う形で実現する事になる。
水蜜桃の未来