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水蜜桃Series

第4章 水蜜桃の果汁





玲の話は簡単だった。めぐみに内緒で作っていた衣装が出来たのだが、それを渡している時間が無い。適当に安全な整備室に保管していたものの、めぐみに事実を告げればすぐに見たいと言ってきた。忙しい身、中々時間を割いてやれない。衣装だって何日も夜なべして作ったのだ。是非この手で渡してやりたいが、そこは我慢。そして翼に白羽の矢が立った。めぐみの為に衣装を取ってやって欲しいというのだ。てんしをとれ、というのはこの事だった。


「つばさ、ありがとう!!」
「お安い御用だよ、お姫様。いや、天使様。」
「つばさ、つばさ。」
「ん?」


翼の部屋に戻ってめぐみが嬉々と羽のついた白いドレスを揺らす。今にも着たいと目が言っているが、明後日の楽しみにと幼いながらに我慢しているのだろう。ドレスをぎゅっと小さな手で抱き締めて、めぐみは翼を呼んだ。屈んで同じ目線になり何だと頭に手を置けば、その頭がゆっくり移動した。ちゅっと可愛らしい音を立てて、翼とめぐみの距離が無くなった。今迄ゼロだったそれが数センチ数十センチと離れ、めぐみは顔を赤くしてにこっと笑う。


「だいすき」


そのまま駆け足で衣装を手にしたまま出て行ってしまった。


「……っ不意打ちだろ!」


真っ赤になって呟く翼の声は幸い自室の為、空気を僅かに振動させて消えた。クリスマス当日、可愛らしいめぐみの天使姿を見れたので思い出し顔を赤くしながら照れて笑ったが、横で玲が「めぐみに大好きな人の所に行って取ってもらいなさいって言ったのよ」とボソッと呟く。今度こそ林檎のように真っ赤になった翼が頬の唇の感触を思い出すまで、あと二日。



水蜜桃の果汁


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