第4章 水蜜桃の果汁
「つーばさ!」
「めぐみ、どうしたんだ?遊びに来たのか?」
「えへへ。あしたはなんのひでしょーか!」
「明日?明日…っと、クリマスイヴじゃなかったか?」
「つばさせいかーい!」
ニコニコと笑う、童女を撫でるその手つきは優しかった。くしゃくしゃとされても全く気にしないのか、気持ち良さそうに目を細めて笑うめぐみ。そんなめぐみを見て自然と口元が綻んでいく翼。コンコンコンと控えめなノックの後、ばあっと顔を出したのは愛しい幼い彼女だった。嬉しい訪問客に難しい書類を素っ飛ばして笑顔で迎え入れる。差し入れにとコーヒーと茶菓子を持ってきてくれた。喜びありがたさを思いながら受け取る。
笑って翼のベッドに腰掛、ブラブラと脚を動かせる。幼少期独特の折れそうな白いその足の細さに目を細め、微妙なラインのスカートの為チラ見する太腿から頑張って目を逸らし、翼はカレンダーを見た。携帯で日付けを確認して、明日は間違いなくクリスマス前日だと明確に頭が弾き出した。
「ことしはめぐみとつばさで、じゅんびするの。」
「クリスマスは明後日だ。明日でもいいんじゃないの?」
「ことしはなんかセットがすごいんだって!だからきょうからじゅんびなの。」
「ああ、どういえば廊下がバタバタ煩かったな。」
「めぐみてんしさんのかっこするの!ね、つばさ、てんしさんとって!」
「は?」
「てんしさん、あきらちゃんがしまっちゃったの。どこにあるかわからないの。」