第1章 幸せの黒猫
「こんにちはーティッシュどうぞー」
「近くにモデルルームオープンしましたー」
「お立ち寄りくださーい」
すれ違う人々にティッシュを渡した。
頭を下げて受け取ってくれない人、ありがとうと言って受け取ってくれる人、無視する人、何回か見たことのある人、さまざま。
(さ、この場所結構いたし、ちょっとだけ場所変えようかな)
次の目的地へ向けてトコトコ歩き出す。
途中で狭い道を見つけて、
(へ〜こんな道もあるのね)
と思い、立ち止まって細道を覗いてみた。
足元からスルリとミケ猫が抜けていった。
(にゃにゃ!ネコ!)
自称無類の猫好きな私。
ちょっとだけなら追いかけてみても大丈夫、と自分に言い聞かせて後を追う。
角を曲がるとそんなに差がなかったミケの姿が消えていた。
(さすがだな〜撒かれちゃった)
踵を返して元の道に戻ろうと少し歩くと、植木鉢に隠れた黒猫を見つけた。
(ここにもにゃにゃ!しかも逃げない!これはチャンス‼︎‼︎)
好奇心に誘われるまま猫に手を近づけた。
意外にもあっさり受け容れてくれ、気持ちよさそうに撫でられている。
(飼い猫だ〜レインボーのミサンガ首輪にしてるけど飼い主さんの手作りかな?オシャレ〜🎶)
そして黒猫はしなやかに立ち上がりこちらを見つめて歩き出し、更に振り返った。
(え?何?誘ってるの?たまらんなぁ〜)