第9章 失ったモノ
える
岩泉さんも何も喋らない。
どうしよう。
この場をなんとかする力をわたしは今持っていない。
岩泉さんの方を見てるだけ。
こちらに背を向けたまま、立ち上がると
顔も見ずに扉に向かう。
扉に手をかけて、
岩「とりあえず意識が戻ってよかった。
今はまだ自分の部屋入るより、こっちにいた方がいいだろ?
また明日、飯持ってくるからな。」
まって、やだ。
1人にしないで。
扉を開けて彼が出て行こうとする。
………こんなに怖い思いをするなら、
眠っていた方がよかった。
伸ばした手から身体が崩れてく。
いや違う。落ちてるんだ、わたし。
痛い思いをする。なんてこと、思わなかった。
寂しい思いをして苦しむ方がよっぽど辛い。
なんだわたし。身体だけじゃなくて、心もこんなに柔いのか。
スローに思える感覚。
でもきっともうすぐで床に落ちる。
ドサリという音ともに、冷たい感触。
床に落ちちゃった。
このまま眠れば、寂しくないのかな…?
目を閉じたその時、声が降ってくる。
岩「なんでそんな顔してんだよ。」
薄っすらと目を開けると、わたしを抱き抱える岩泉さん。
岩「我慢出来なくなるだろ。」
そして唇を押し付けた。