第7章 挑戦
金田一
金「国見ー代わるか?」
国「いや、いい。」
即答かよ。
金「練習で疲れてんじゃねーの?」
国「金田一の方が疲れてるんじゃないの?」
…どうしても離したくないんだな。
まぁ、知ってはいたけど。
あの日、歓迎会の最中にえるを探した。
楽しんでいるのは俺たちだけで、
本人が楽しくない、何てことはよくないと思ったからだ。
まぁ、その他にあるとすれば呼びに行ったんだから
ある程度は気にかけるべきだと思ったから。
その時の俺は、誰に話すつもりでもないのに、
理由を並べた。
えるの席の隣には、国見。
何かを話してる。
えるはこちらに背を向けていて、
表情はわからないけど、
国見の表情から読み取れることは一つ。
嬉々としてる。
誰かを困らせる時に見せる様な表情。
ああいう時は、だいたい確信犯だ。
それを見ていると、
国見は、えるの手を取る。
そしてそのまま口元へ。
誰も見ていないとでも思っているのか?
吸血行為ってダメなんじゃないのか?
…同じ、吸血鬼同士だろ?
国見に咥えられた指に
白い牙が皮膚を突き刺したとき、
微かに甘い香りがした。
この時の俺は知らなかった。
彼女が俺たちとは違う存在なのだと。
でも、香りが違う。
甘さが違う。
今まで口にした"人の血,,に限りなく似ていて、
それのどんな血にも似つかわしくない
強い媚薬の様な甘さ。
自身が飲んだわけでもないのに、
匂いだけでこんな風に心音が高鳴るものなのか。
すぐその香りは消えたから、
国見がまたすぐに消してしまったのだと
思った。
それの仕方を知っているから
簡単に想像がついた。
でもそれを思い浮かべると、
何処となく息苦しくなる。
グラスを手にし、一口含むと、
グラスの中を覗き込む。
俺らの為に浮かべられたミント。
少しだけ入ったレモン果汁も俺らの為。
そう、彼女以外の俺らの為に。
後日存在するはずもないと思いつつも、
及川さんに尋ねたそれの答えは
Yes
純潔で、純血の持ち主
イブ
この息苦しさは、お前がイブだからなのか?