第6章 距離感
える
日「いつまで蒼の塔にいるの?」
本当にいつまでなんだろ。
五つの塔をどれくらいの日数で回れば良いのだろう。
える「いつまでだろうねー。」
不意にギュッと掴まれた手。
日「早く俺たちの塔に来て?
一緒にいれば、守ってあげられるでしょ?」
真剣な物言いに思わず、視線を外してしまう。
える「私の言葉で、すぐ移動できると思えないし…。」
日「じゃあ、俺が連れてく。」
突拍子のない言葉に驚いた。
日「駄目?」
その一言に、寄せられるように視線を合わせる。
何も言えずにいると、日向はハッとしたような顔で
日「ごめん、える!」
さっきの緊張感がパチンと弾けたように、
いつもの日向に戻っていた。
日「そんな簡単じゃ無いよね。
俺もそんなことできないと思うもん!」
ニコニコと笑いながら、無理だよなー
とか、独り言を述べる姿は先ほどとは全く違くて。
私はなんとか笑顔を作って、
える「影山君にも、よろしくね。」
って席を立った。
日「ただ、そんなことができたら良いのにって思うよ。
心から。」
える「?」
後ろから聞こえた言葉は聞き取れなくて、
振り返ると、
いそいそと授業の準備をする姿があった。