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吸血鬼なんて聞いてないっ!

第5章 王様ゲーム



える

「岩泉さん、何やってるスか。」

岩泉さんが振り返る。

京谷さんだ。

もし京谷さんも血を吸うなんてことになったら、
私も死んでしまうと思う。

助けて欲しいけど、恐怖心のせいか声が出なかった。

無言でこちらに向かってきて、
黙って両手首の拘束を外し、
岩泉さんを私の上から避けた。

私に手を差し出してくれたので、
手を取るとそのまま立ち上げられた。

える「ありがとうご あっ!」

急に手を引かれて、そのまま台所を抜け、
玄関に来て、部屋の番号を聞かれた。

える「302、です!」

返答のないまま、ズンズンと進んでいく。

歩幅の違いからか、私は小走りになりながら
ついて行った。

私の部屋の前に着くと、やっと手を離して止まってくれた。

京「スミマセン。いきなり引っ張って。」

える「い、いえ。ありがとうございました。」

小さく頭をさげる。


………。


沈黙が辛い。

すると、京谷さんは口を開いた。

京「岩泉さん、あんな人じゃないんスよ。
今日は、多分…。」

言葉を選んでいるようだ。

なんだかその様子が、見た目と違って
可愛く見えた。

える「大丈夫です。岩泉さんが、ああいったことをする人じゃないって事、歓迎会の中で
知ることできました。」

ふっと笑うと、京谷さんは頷いた。

京「じゃあ、俺戻るんで。」

える「ありがとうございました。」

私が頭を下げると、京谷さんに頭を下げられた。

今来た道を戻る京谷さんは背を向けたまま、

京「鍵とか、締めてください。此処、男ばっかなんで…。」

矢巾さんにも言われた言葉。

此処は、私を気遣ってくれる人がいる。

心がとってもあたたかくなって、
少し大きめに返事をした。




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