第3章 ヘブラスカとイノセンス
「ヘブラスカも?」
もとは人間だった?
ヘブラスカを仰ぎ見ればヘブラスカは居心地悪そうに視線をさまよわせる。
「お前たちと…タイプはだいぶ違うが…………私は例の石箱の適合者として…教団の創設時からずっといる、イノセンスの番人だ…。たくさんの…エクソシストと出会ってきた…………。梓…お前に神の加護があらんことを…」
ヘブラスカのその寂しそうな様子になんだかふと両親や姉さまたちのことを思い出した。
父さんはもしかしたらどこかに生きているかもしれないが、母さんが死んだときも楓姉さまが死んだときも姉さまたちがアクマになったときも……。
胸が張り裂けそうなくらい悲しかったし、いっそのこと一緒に死んでしまおうかと思うくらい苦しかったし、何よりも何もできなかった自分を殺したいくらい自分が憎かった。
そんな思いをこの人はずっとしてきたのだろうか……?
そう思うとなんだか無性に大声で泣きわめいてヘブラスカを抱きしめたくなったが、そんなことできるわけがないので、ボクの胸の中だけにとどめておく。