第2章 私の彼氏は大王様【及川徹】
「「きゃー!!及川くーん!!」」
今日も体育館に響く声援。
「どーも」
バレー部主将及川徹
これでも私の彼氏だ
…………一応。
「美咲~ちゃん!!」
「何ですか?」
「ド・リ・ン・ク頂戴な」
「どうぞ」
徹くんはドリンクではなく私の手を掴んだ。
「何ですか?」
「何が?」
質問を質問で返さないでくれますか…
「飲まないなら片付けますけど」
「飲みます!飲みますから…ちぇっ…ちょっとは照れてくれたって良いのにさ!」
徹くんと付き合い始めて今年で三年目。
他の女の子がどれだけ徹くんを応援していても
どれだけ告白されても
最近は慣れてしまい何も思わなくなった。
嫉妬でもない、嫌いな訳でもない。
「ねえ、徹くん…」
「及川、ちょっといいか?」
「岩ちゃん何?どうしたの?……ごめん、美咲また後で」
バレー部主将とバレー部マネージャー
だだ部活上の付き合いしか無くなってきていた。
「マネージャー、ドリンクもう無いけど…」
「国見ちゃん…ごめんね、今作って来るから」
私はドリンクの籠を持ち、体育館を出た。
一歩出ればまた聞こえる声援。
ここに来てから当たり前の事なのに、何故か最近寂しい…
ジャー___
水道から流れる水の音。
体育館から聞こえるボールの音。
皆の声。
まるで私だけ別の世界にいるみたい。
ポタっ__
手の甲に落ちた一粒の水。
ポタ、ポタと止まらない原因は私の涙だったから。
『及川さんは美咲の事大好きだよ!』
聞き飽きる程言われた『好き』って言葉。
最近は
「聞いてない……」
ドリンクを持ち体育館の扉の前に立つけど中に入れない。
私が進んだ先は体育館と反対だった。