第11章 ポケットの中は【赤葦京治】
京治くんに連れられて来たのは皆から少し離れた日陰。
「暑いですから…無理はしないで下さい」
「うん。ありがとう」
持ってきた水を受け取り一口飲んだ。
「冷たい…あ、京治くんも飲む?」
「飲みます」
京治くんは水を飲むと私を見る。
「間接キスですね…ワザとですか?」
「ち、ちがっ…」
そんなつもりじゃなかったけど
言われると恥ずかしい。
「まあ、オレは気にしませんけど…むしろ大歓迎です」
「それって皆にも?」
「美咲限定ですよ」
「そうだよね…」
びっくりした…
「それより、さっきは何話していたんですか?」
「さっき?雪絵ちゃんたちと?普通の話だよ。あ、そういえばさっき雪絵ちゃんに何か貰ったんだ。京治くんと使ってねって…」
「オレと使って?………嫌な予感しかしないんですけど」
ポケットに手を入れるとビニールに包まれた包みを取り出して京治くんの前に出した。
「これ……ゴム…ですね」
「…………」
堂々と避妊具を取り出した私が恥ずかしい。
真っ赤になりながら隠そうとする私の手を京治くんが止めた。
「今夜辺りどうです?そろそろ限定なんですけど…」
私から奪った避妊具のパッケージの端を咥えながら見つめる目に余計身体が熱くなる。
「なんなら今ヤります」
「いいえ!夜でお願いします!」
「じゃあ今夜決行で…」
「え…?」
やられた…
「それまでこれはオレが預かります。一個じゃ足りないんで帰りに新しいの買いに行きましょう」
「京治くん…?」
「今夜が楽しみです」
合宿終わりの夜、京治くんは深夜遅くまで寝かせてはくれなかった。