第5章 彼女が小さくなりました【影山飛雄】
「ふぇっ…………」
「!!」
まただ。
まだ泣くな。
「うわぁぁぁん!!」
「くそっ!!」
俺は膝から崩れ落ちた。
今、俺の前で泣く幼児は俺の彼女だ。
そう…彼女だ!
そういう趣味はねぇからな!
「美咲…泣くな…」
恐る恐る声を掛けても泣き声の方が大きくかき消される。
何故こうなったか?
それは俺が美咲の家に迎えに行った朝だった。
部活の為に体育館に向かっている最中
ポン!!____
音と共にさっきまで視界にいた彼女が消えた。
「!?」
目線を下げれば彼女そっくりの彼女の姿があった。
「はぁ…………」
これから一体どうすれば……
ガラガラ
泣く美咲を前に頭を抱えていると、体育館の扉が開き人がぞろぞろと入ってきた。
「おはよ………っ何だ!?」
「影山ぁ!誰だよその子!」
最悪な事に、日向、田中さん、西谷さんがそろって来た。
「何だよ~!今日は美咲ちゃんはいねえのかよ!」
「影山、そいつ…誰かに…」
この人たちが頭が悪くて安心した。
「どう見ても美咲でしょ?その子」
「つ、ツッキー!?」
「ちっ!!」
思わず舌打ちしてしまった。
「カバンは2つあるし、美咲のカバンには無造作に制服が詰められてるし、普通は更衣室にあるしね。それに王様もそのまま来たって感じだし…」
「その子美咲なのかよ!?影山!」
「ち!ちげぇ…………くはない…」
これ以上の隠し事は出来ず、先輩たちが集まってから全て話した。
「…………という事なんです」
「突然ですか……」
武田先生は片手を顎に当て考えていた。
「美咲はいつ戻るんだよ?」
「さっぱり…」
「お待たせ…」
ガラリと開いた扉から清水さんと美咲がやってきた。
「おお……」
小さくなりブカブカだった制服は清水さんが用意してくれた子供服に変わった。