第6章 黒い翼
それからというもの、町の子供たちが揶揄いに来る事はなくなったが一瞬で噂が広まり同情していた人ですら私を避けた。
悪魔の子、化け物、いろんな噂が立ったようだった。
だが私は敢えて否定はしなかった。
私自身にも理解が出来ない力を、いつどこで出してしまうか恐ろしかった。
それに下手をしたらみんなを傷付けてしまうのではないかと。
只々自分が恐ろしかった。
それは今でも変わらない。
「だから私は故郷を出たの。みんなを傷付けてしまいそうな自分が怖くて。」
「輝夜ちゃん…。」
私はぎゅっと拳を握った。
「トランクスさん。隠してて…ごめんなさい。それに…トランクスさんを傷付けてしまいそうで…怖いです。」
何を感じたのだろうか、トランクスはただ俯いていた。
「…輝夜ちゃん。」
途端にトランクスが名を呼んだ。
私は恐る恐るトランクスの方を向く。
するとトランクスは私に近付きそっと手を握った。
「と…トランクスさん?」
ハッとしてトランクスの顔を見る。
「よく…話してくれたね。」
「…えっ?」
「でも俺は輝夜ちゃんを化け物だなんて思わないな。」
軽く笑いながらトランクスは言った。
「どうしてですか?人を傷付けてしまうかも知れないんですよ…?」
私はトランクスの顔から目線を外した。
「動物達や植物を大切にする様な子が…そんな心優しい子が化け物だなんて俺は思えないな。それに…。」
「?」
「困ってる俺を助けてくれた。」
トランクスはハハっと笑いながらそう言った。
「トランクスさん…。」
また瞼が熱くなる。
「俺は思うけど、輝夜ちゃんの”その力”が出てしまった理由って何かを守ろうとした時に出るんじゃないかな。」
「…何か?」
「うん。その時だって花を守ろうとした気持ちが外側に強く出てしまったんじゃないかなって。」
トランクスは続けた。
「今は無理でもその力をコントロール出来る時が必ずくる。それに、守ろうする気持ちが形に出るんだ、誇りに思っていいと思うよ。」
私はいつの間にか泣いていた。
恐れられるだけの、傷付けるだけの力だと思っていた。
それを、何かを守ろうする力だとトランクスは教えてくれた。
「…りがと…ございま…。」
何かから解放された気分だった。
心からの安堵が涙となって溢れ出ている様だった。