第1章 ・・・・・・どういうこと?
「あー・・・その荷物かせよ
俺が持ってってやる」
「え、いや・・・大丈夫ですから
本当に持って行けます灰崎くん」
そう口にしてから、しまったと
顔を歪める。顔を上げれば
怪訝そうにこちらを見る灰崎くん。
「あ?何でアンタ俺の名前知ってんだ?」
マンガで見た時の彼よりも
印象が変わっている。
大人っぽくなったのは勿論
髪型も中学の時のような髪型になって
なんだか違和感・・・
そんなことを思いながら
どう、切り抜けるかを考える。
「灰崎っていう名字っぽいからつい?」
「はぁ?なんだそりゃ」
「あ、当たってたんですか?
凄いなぁ〜・・・」
「なんだその棒読み
つか、そんなフラフラしてりゃ
嫌でも目に付くわ」
う・・・駄目だ。
墓穴を掘りすぎて
誤魔化すどころか酷くなっている。
「とにかく、持てますから
大丈夫です!」
走って逃げよう。
そう思い、足を動かそうとしたら
手が軽くなった。
「あ・・・」
「ったく、素直じゃねーし
うるせーし、黙って持たせろ
ほら行くぞ」
有無を言わせず、スタスタと
歩いて行ってしまう灰崎くん
私はこれ以上は無理かと
ため息を漏らして後を追う。
なんでよりによって
こんな所で会うのか・・・
会話も特になく沈黙が続く。
もう辛すぎるこの状況。
あぁ、早くつかないかなぁ。
近い距離が酷く遠くに思える。
チラリと、灰崎くんを見た。
目つきは鋭くて近寄り難い
雰囲気は相変わらずだけど
高校の時よりも、どこか
柔らかくなったような気がする。
こうして、荷物を持ってくれるとか
意外すぎてびっくりだ。
それとも・・・本来の彼は
こういう性格なんだろうか?