第84章 【ホントウハ】
「璃音……あっちで少し休もう?」
「すみません……私、泣かない、つもりだったのに……こんな……」
「分かってるから……大丈夫、みんな、涙の本当の理由、気づいてないよ……」
そっと私の肩に触れ、みんなの視線から隠してくれる美沙に、すみません、そうもう一度謝罪する。
泣き止まなくちゃ、そう思うんだけど、美沙の温もりに触れたら、余計に涙は止まらなくて……
もう、ヤダ……
自分の失態も、英二くんと鳴海さんのことも、今更なのに止まらない涙も、もう何もかも嫌になって……
痛くて痛くて、胸が押しつぶされてしまいそうで……
『ところで鳴海さん!中等部から絶対彼女を作らないことで有名な、あの菊丸英二を射止めた感想は?』
『はい!、もう、信じられなくて、夢かと思いました!』
聞きたくない……
今は、ううん、いつだって、もう限界……
少しでもその声を遠ざけようと、必死に両耳を塞いで縮こまる。
璃音?、大丈夫だよ?、そんな気にしないで?、そんな私にクラスメイト達が優しい声を掛けてくれる。
『そっかー、元気で明るいがトレードマークの英二だけど、彼氏としてはどう?』
『すっごく優しいですよー、いっぱいお願い聞いてくれるんです!』
耳を塞いだ手がネコ耳のカチューシャに触れる。
そのまま手を伸ばし、ギュッとそれを抱きしめる。
美沙の声もクラスメイトの声も、すごく優しくて嬉しいものなのに、それさえも今は辛すぎて……
本当に欲しい優しさは、もう鳴海さんのもので、私のものにはならないんだって……
もう英二くんの優しい手は、私の手を取ってはくれないんだって……
もう……
「小宮山、立って!」
突然、手首を握られ、勢いよく引き起こされる。
え?、その声と行動に戸惑うも、引かれるまま立ち上がる。
あ、あの……、なんとか声を振り絞ったけれど、その横顔はなにも言わなくて……
どうして……?
英二くん……