第84章 【ホントウハ】
「璃音が責任感じる気持ちはよく分かるよ?、でもさ、あんた、それ、他の人だったら弁償させる?」
え?、他の人だったら……?
ハッとした顔を上げた私に、させないでしょ?、そう言って美沙は私の顔をジッと見つめる。
確かに、他の人だったら、弁償して?、なんて言わないけれど……
そうなんだけど……
「学園祭って誰かの失敗を人に押し付けるものじゃないでしょ?、みんなで協力しあって成功も失敗も分かち合うものでしょ?」
「だったら、どうするんですか?、私がダメにした材料費だけで売り上げは大打撃です。そんなの、私、嫌なんです!」
「そりゃ、そうかもしれないけれど……そうだ、私が買おうか?、私なら全部食べれるし!」
「それこそダメですよ!、美沙にだけ負担をかけることになりますし、そもそも、いくらなんでも、こんなの全部食べたら死んじゃいます!」
思わず止める語尾が強くなり、そんな私に、それ、自分で言う?、なんて美沙が苦笑いする。
だって自分だからこそ分かる、私の作るものなんて、とても食べられたものじゃない……
食べられたものじゃないのに……
何度も英二くんは、食べてくれた……
こんな隠れてない隠し味、初めてって……
私の作ったお弁当が食べたいって……
きっと、すごく無理しながら……
残さず食べてくれたの……
ハラリ、涙が零れ落ちる。
やだ、こんな時に……泣かないって決めたのに……
ここで泣いたら卑怯だって……
みんな何も言えなくなっちゃうって……
璃音!?、美沙が驚いて声を上げる。
違うんです、そう慌てて涙を拭い、必死に堪える。
『さぁ、ここでファイナリスト達に意気込みでも聞いてみようか!先ずは大本命の呼び声高い鳴海芽衣子さん!緊張してますか!?』
『はい、少し……でも英二先輩が一緒に居てくれるから頑張ります!』
必死に堪えているところに聞こえて来たアナウンス……
なんでかな……タイミング、良すぎるよ……
これじゃ、涙、止まってくれないじゃない……