第84章 【ホントウハ】
「……璃音、あんた、タコ焼き、焼けなかったの!?」
「はい……本当に申し訳有りません……」
ものすごく驚いた様子で美沙が私の元に歩み寄る。
ううん、美沙だけじゃない、みんな、「信じられないものを見た」という顔で私と私の焼いたタコ焼き……もとい、炭を見ている。
「そう言えば、璃音がタコ焼きの練習してるとこ、誰か見た?」
「ううん……璃音、いつも急がしそうだったけど、練習には……」
少し離れたところで、コソコソと確認し合うクラスメイトたち……
それにしたって、どうやったらあんな風になるの?、誰かの呆れた声にズキンと胸が痛む……
「っていうか、あの黒焦げ、どうすんの?」
「そりゃ、全部捨てるしかないでしょ……」
「えー、大損害じゃん、出来ないならそう言ってよ……」
当たり前に上がるその迷惑そうな声にハッとして、ごめんなさい!、そう慌ててもう一度頭を下げる。
「あ、あの、これ、全部、私が買い取りますからっ!」
そう、これは私の責任……
出来もしないくせに、断りきれなくて、全部ダメにした私の……
そんな私の申し出に、だったら、まぁ……、なんて不満の声を上げていた人たちの態度が緩和する。
「何言ってんの、そんなの違うでしょ!」
すぐさま大声を出したのは美沙……シンと一体が静まり返る。
それは今まで何度かあった光景、正義感の強い美沙の、とても強い信念の表れ……
「本当、璃音、出来ないなら出来ないって言わなきゃダメでしょ!、完全にあんたが悪い!」
「は、はい、ですから私が……」
買い取りますから、そうもう一度言いかけたその声を、だから違うでしょ?、そう美沙が低い声で打ち消した。
違うって言われたって、やっぱり、私が悪いんだもん……
ただでさえ混乱させて迷惑かけたのに、その上、利益まで減らすわけにはいかないじゃない……!
いえ、これは私の責任ですから、そうもう一度、美沙の顔を真っ直ぐに見て繰り返した。