第84章 【ホントウハ】
人間、やる気になったって、出来ないことはあるわけで……
そんなの、本当は最初から分かりきっていたことで……
どうしよう……、そう焦る私の目の前には、今、得体の知れない黒い物体が並んでいた……
とてもたこ焼きなんて呼べない、奇跡的に丸い形は保っているけれど、我がネコ耳たこ焼きがウリにしている、「カリッ」とも「トロッ」とも全く無縁の……
そう、これは、まさに、炭……
こんなの、人様に出せるはずないじゃないの……
鉄板の上で、その鉄板と同化しているタコ焼き……もとい、炭を眺める。
万が一、口に含んでしまえば、口いっぱいに広がった苦味で、もがき苦しみそうなそれは、業務用の大きな鉄板いっぱいに並んでいる……
言わずもがな、とてもお客様からお金をいただいて売れるような代物じゃなくて ……
それどころか、逆にこちらからお金を払ってお願いしても、断られること間違いなしで……
こんなにたくさん失敗して、私、なにやってるのよ……
売り上げはみんなで打ち上げの資金にしようって決めていて、みんなで原価抑えて、薄利多売で頑張ってくれたのに、私のこの大失敗で全て台無しになってしまった……
「璃音、そろそろ焼けた?、……って、なに、この煙!?」
あ……、美沙の声に、みんなの視線が集中する。
その途端、ざわめき出すブース内……
信じられないものを見た、そんなみんなの驚く顔にいたたまれない気持ちになる。
「ご、ごめんなさいっ!、私、失敗して……その……本当に申し訳ありません!」
ガバッと、昨日の大石くんと同じように思い切り頭を下げる。
こんな失敗、謝って許される問題じゃないけれど、それでも平謝りするしかなくて……
情けなさと恥ずかしさで涙が滲み、目頭にキッと力を入れて我慢する。
泣いちゃダメ、ここで泣いたらみんな何も言えなくなってしまう……
卑怯な涙は流したくない、そう必死に自分に言い聞かせた。