第83章 【ガクエンサイ】
「待ってくださいね……これなんて、私のお気に入りなんですけど……」
携帯を操作しながら、これぞ!という写真を呼び出して、はいっとディスプレイを見せると、どんどん海堂くんの顔が緩んできて、その顔を私に見られていることに気がつくと、慌てて頬を引き締めていて、でも全然隠しきれてなくて……
「……画像……いいっすか……?」
「え……?」
「画像、転送してもらって、いいっすか?」
とうとう、真っ赤な顔でそう言い出した海堂くんが本当に可愛くて、もちろん構いませんよ?、そう言ってクスクス笑うと、パッパッといくつか画像を選び出して海堂くんの携帯に転送する。
その写真を眺めながら、海堂くんはすごく嬉しそうに微笑んでいて……
そんなに喜んでくれるなんて、飼い主としても嬉しくて……
「これが小宮山先輩んちのネコっすか!、へぇー、可愛いっすねぇ!」
横からひょいっと桃城くんが海堂くんの携帯をのぞき込む。
おい、明らかに海堂くんが迷惑そうな顔をして、また険悪な雰囲気になり、不二くんが笑顔で圧力を加える。
「名前はなんて言うんすか!?」
何気ない桃城くんの一言……
この流れなら、当然の質問……
「……ネコ丸……」
言いにくいな、なんて思いながらも口にしたその名前に、一瞬で空気が固まったのを感じて、申し訳ない気持ちになる。
おい、テメェ、余計なこと聞くんじゃねぇ!、なんて海堂くんが責めて、だってよ、まさかこんな所に地雷があるなんて思わねーなぁ、思わねーよ!、なんて桃城くんが焦っている。
そう言えば、越前とこのネコはカルピンって名前だったよな、なんて話を変えようとして全く変えられていない2人に、あの、気にしないでくださいね、そう慌てて笑顔を作る。
「ちょっと気まずかっただけですから……菊丸くんのネコでネコ丸なんです」
名前は気まずいですけど、すごく可愛いですよ?、そう言って笑うと、桃城くんは困った様子で苦笑いをし、海堂くんは申し訳なさそうに黙ってその場を離れた。