第83章 【ガクエンサイ】
「はぁ……もうこれは、人生、最大の汚点です……えっと、こういうの、なんて言うんでしたっけ……黒歴史?」
「なにもそこまで……とても似合っていたよ?」
「気休めはよしてください……」
自分でもわかっているけれど、私の見た目は好きに反してあんまりフリフリのものは似合わなくて……
だからフリルもレースもワンポイントでしか使わないようにしていて……
「不二くんは本当によく似合っているのに……私は衣装に着られてる感じ……もうこの写真は封印です」
「僕はパネルにして部屋に飾ることにするよ」
「や、やめてくださいよっ!」
どこまで本気かわからない不二くんの微笑みを軽く睨み付けながら、写真の中のぎこちなく笑う自分にまたため息をつく。
「でも残念だな……」
不二くんの声のトーンが少し低くなって、不思議に思って振り返ると、不二くんは少し離れた位置で、両方の指を交差して四角を作りながら、私をジッと見ていた。
あ、あの……?、戸惑いながら問いかける。
ブワッと吹きおこる秋風……慌てて舞い上がる髪をおさえて身を縮こまる。
「シャッターチャンス……今、ここにカメラがないのが悔しいよ」
あ、そうか、不二くん、写真が趣味だったもんね……
不二くんはよくフィルム式のカメラを持って来ていて、その目にとまったものをよく写真に収めていて……
「いつか、小宮山さんの自然な表情を写真に収めてもいいかな……?」
「あ、えっと……構いませんけど……」
あまり写真を撮られるのは好きじゃないけど……不二くんになら、撮られてもいいかな……?
何となく、そう思った……
良かった、そう不二くんはいつもの笑顔になると、前に英二が撮った小宮山さんの笑顔を見て、少し妬いてたんだ、なんてクスクス笑う。
「ふ、不二くん、あの携帯写真、見たんですか!?」
「うん、前に英二の後ろからこっそりね」
なんてことを……、そう頭を抱えてしまうと、そんな表情も可愛くていいな、なんて不二くんはいつもの冗談を言って笑った。