第83章 【ガクエンサイ】
「やぁ、裕太、来てくれて嬉しいよ」
「____兄貴っ!なんだよ、その格好!」
奥からすごく嬉しそうな笑顔で現れた不二くんは、とても優しい声で不二裕太くんに話しかける。
やっぱり弟さんなんだ!、そう思って、弟さんの顔を見ると、弟さんは不二くんの王子様ファッションにとても驚いていて、それから、私と目が合うと、慌ててペコリと頭を下げた。
「この格好、気に入ってくれた?、大丈夫、裕太の分もちゃんと用意してあるよ?」
「だ、誰が着るかっ!」
「クスクス、そんなに照れなくてもいいのに……」
「照れてねぇ!!」
ああ、不二くん、弟さんのこと、凄く可愛いんだろうなぁ……
不二くんの全身から醸し出す雰囲気は、弟さんへの愛が滲み出ていて……
でも、弟さんは、その愛情が重いのか、ちょっと迷惑そうにしていて……
温度差はだいぶあるけれど、でも凄く仲よさそう……
ぱっと見はそうでもないんだけれど、根っこのところの絆は凄く強そうで……
「あ、裕太、間違ってるよ、これは他校生用、家族用はこっち」
「んなの、どっちでもいいだろ!」
「よくないよ、裕太は僕の可愛い弟だからね」
「だからそう言うの、やめろって言ってんだろ!」
「んふっ、そうですよ、不二くん、そんなことはどうでもよいのです」
仲良く戯れ合う不二兄弟の中に割って入ったのは、天然パーマをくるりくるりと指に巻きつけながら、怪しげ……もとい、神秘的?な笑みを浮かべる男の子……
紫色に薔薇が散りばめられている個性的な服が特徴的……
「あなたのその格好、なかなか素敵ですね、さすが、青学、不二周助です。でも裕太くんにはどうでしょう……?、彼が着ないのでしたら、私が変わりに着て差し上げても構いま……」
その個性的な人が決めポーズで熱弁する中、肝心の不二くんはそんは話、全く聞いていないようで……
小宮山さん、紹介するよ、弟の裕太、そう私に弟さんを紹介してくれるから、いいのかな?、なんて思いながらも、いつも不二くんにはお世話になっています、そう弟さ……裕太くんに頭を下げた。