第83章 【ガクエンサイ】
「あ、でも、不二くんのほうが私より忙しいですよね?、時間、合わないんじゃ……?」
「大丈夫だよ、小宮山さんの自由時間に合わせて、僕も調節したからね」
不二くんは生徒会長としてはもちろん、クラスや男子テニス部の模擬店もあるわけで……
だから、自由時間を一緒にって言ったって、無理なんじゃないかな?、そう思って問いかけたら、思いがけない返事が返ってきて……
そんな都合よく希望が通ったのかな……?
あ、でも、生徒会執行部のみんなの予定を組んだのは、会長の不二くんだから、もしかして……
「……うん、生徒会も部活も長である僕が割り振ったし、クラスのみんなも僕の希望を最優先で通してくれたしね……」
やっぱり……!
以前、英二くんのことで落ち込んでいた私を、部外者なのにテニスコートに入れてくれて、一緒にテニスを楽しませてくれた。
時間延長の申請もしてなかったから先生にバレちゃって、怒られたけどすごく楽しくて……
また、職権乱用したんですか?、そう呆れ気味に笑う私に、それを言うなら、特権だよ、そう言って不二くんはいつもの笑顔でクスクス笑った。
「さすが青学は受付嬢も美人だーね、お近づきになりたいだーね、名前を教えて欲しいだーね」
「他校生の方でしょうか?、こちらに学校名とお名前をお願いします」
受付に来た男子グループに声をかけられる。
だーね?、なんて不思議に思いながらも、よくあるナンパの声には無視をして、マニュアル通りに名前を書いてもらう。
ナンパなんていつもだけれど、大抵ツンツンしとけばすぐに諦めてくれる。
不二くんがくる前も、ラッキー!、なんてしつこく誘われたけど大丈夫だったし。
【聖ルドルフ学園、不二裕太】
……不二?、その中の一人が書いた名前にすぐに思い描いたのは、当番でもないのに私に付き合って、一緒にテント内にいてくれる不二くん。
偶然かな……?、そう首を傾げながら彼に視線を向けた。