第83章 【ガクエンサイ】
「……そうだ、小宮山さん、自由時間はもう誰かと約束しちゃった?」
「え……?、あ、いいえ、まだ、特には……」
突然の話の展開に、一瞬、戸惑い、それから慌てて返事をする。
学園祭期間はすごく忙しいけれど、生徒会のほうもクラスの方も担当じゃない時間は若干だけど確保できていて……
でもその時間は残念ながら美沙がクラスの担当になっていたから、1人で見て回るのもなんだし、生徒会かクラスか、忙しそうなところの手伝いでもしようかな?なんて思っていたけれど……
「それじゃ、その時間、僕が予約しても構わないかな____?」
一瞬、ドキリと胸が高鳴った。
ああ、また、だ……
時々、見せる不二くんの真っ直ぐな視線は、私の胸をざわつかせる。
それが何故かは分からないけれど……
決して、嫌なざわめきなんかじゃなくて、でもトキメキともまた違う……
もちろん、構いませんけど……、そう戸惑いながら答えると、彼はいつもの穏やかな笑顔で私に笑いかけた。
「良かった、断られたらどうしようかと思ったよ」
「そんな……でも、せっかくの学園祭なのに、私なんかでいいんですか……?、乾くんや河村くんたちとご一緒した方が……」
英二くんはきっとまた鳴海さんと一緒だろうけど……
でも、私なんかより、他のテニス関係の人たちとみんなで回った方が、絶対、楽しいと思うんだけど……
そんな思いを口にすると、小宮山さんが、いいんだよ、そう不二くんは「が」を強調して言ってくれるから、また心臓が反応する。
「前にも言ったけど、今更、あいつらと一緒にいても、楽しくないからね」
「また、そんな……皆さんのこと、大切に思ってるくせに……」
小宮山さんだって僕にとってはとても大切な人だよ、そう言ってくれる不二くんのその言葉は、いつもの冗談だと分かっていても、やっぱり嬉しくて……
ありがとうございます、そう自然と緩む頬でお礼を言った。