第82章 【キョウフノキオク】
『いつもゴメンね、小宮山さんにばかり負担をかけちゃって……』
「大丈夫ですよ、どうぞ気にしないでください」
通話を終わらせると、予定変更でそのまま制服に着替える。
窓辺から見上げた空はいつものようにどこまでも青く澄んでいて、その眩しい空を目を細めながら眺めた。
ピッピッと暗証番号を入力して生徒会室のドアを開ける。
部屋に入るとそのままパソコンを立ち上げて、起動している間にまた窓枠の向こうの空を眺める。
「学園祭の準備、みんな頑張ってるな……」
学園祭はもう今週末で、普段ならまだ人気ないはずのこの時間も、今日はすでに準備に追われた生徒たちがチラホラと登校していて……
それは私も他人事ではなく、学園祭用の資料を大至急で不二くんに頼まれたからで……
これだけ忙しいと、余計なことを考えている暇なんかないな……
ううん、考えないように忙しくしてるって言ったほうが正しいかも知れないけれど……
よし!っと気合いを入れると、パソコンのフォルダを開いて書きかけの資料を呼び出した。
キーン コーン カーン コーン……
カチャカチャとパソコンのキーボードを叩く音を打ち消したのは、校内に響き渡る始業5分前を告げる鐘の音。
良かった……ギリギリになったけど、なんとか時間までに間に合って……
急いでプリントアウトすると、数枚まとめてファイルに入れて、サッと片付け生徒会室を後にする。
「小宮山さん、本当にゴメンね、また仕事を押し付けちゃって……」
「いいえ、不二くんは部活もあるんですし、私にできることはいつでも声をかけてくださいね」
ファイルの中身を確認した不二くんは、申し訳なさそうに頭を下げる。
いくら忙しかったって、上手に時間をやりくりして生徒会長の仕事も部長の仕事もしっかりしている不二くん。
その上、ちょっとでも時間が空けばトレーニングに余念がないし、勉強もしっかりやっている。
本当だったら、身体がいくつあったって足りないくらいなのに……