第82章 【キョウフノキオク】
……イヤ……やめて……触らないで……
お願い……イヤだったら……何度も言わせないで……
拒んでも拒んでも、身体中を這い回る男たちの手と舌……
タバコのヤニとアルコール臭い唾液が、ベタベタと纏わり付いて吐き気がする……
それなのに、そんな気持ちとは裏腹に、身体はハシタナイよだれを垂らしながら喜んでいて……
「イ、ヤァ……ヤメテッ!!、イヤッ!!、イヤァァァ!!!」
押し寄せる快楽、必死に拒むもあっさり弾け飛ぶ……
コンナノ ホントウノ ワタシジャ ナイ……!!
ハッとして目を覚ます。
両方の目からは大量に流れる大粒の涙、バクバクと警笛を鳴らし続けている心臓、毛穴という毛穴から溢れ出た冷や汗で全身がびっしょりと濡れている……
またあの夢……
忘れたいのに、忘れさせてくれない……
ゆっくりと起き上がり、フーッと大きくため息をつく。
まだ少し早いけど、もう起きちゃお……
携帯で時間を確認すると、ベッドから降りてベッタリとかいた汗と、また鮮明に思い出してしまった男たちの感触を洗い流そうと、シャワーを浴びにバスルームへと向かった。
洗い流しても、洗い流しても、全然消えない感触……
英二くんの時はそこに私の気持ちがあったから、そのうち開き直って受け入れられた……
この嫌悪感もいつか消えてなくなる日が来るのかな……?
早く、忘れたい……
あの日の出来事も、この気持ち悪さも、英二くんと鳴海さんのことも……
忘れたいことが多すぎて、もう本当に疲れちゃったな……
涙とため息は、もう止まることを忘れてしまったようだった。
「もしもし、不二くん、どうしたんですか?」
『ごめん、小宮山さん、こんな早い時間に……』
シャワーを浴びて身なりを整えていると、不二くんから携帯に着信がはいった。
こんな時間に珍しいな、そう思いながら受けた電話は、大至急で作成してほしい書類があるとのことで……