第14章 【キュウジツ】
「コレ、おっちゃんからお詫びの品だって」
そうそう、そう思い出しようにそう言って英二くんがベンチに置かれた袋を指差す。
「お詫びの品って……ネコ砂2袋!?」
店長さん、いつも経営厳しいって嘆いている癖に、こんなにサービスさせて悪かったな……そう思って袋の中を覗く。
「そんでカリカリ2キロ!合計12キロだかんな!コレもってアチコチ探し回って……左右のバランス悪いし余計辛いっての!」
そう言いながら英二くんは両手をヒラヒラさせ、頬を膨らませながら、おっちゃん反省してたし許してやれば?そう私に視線を向けた。
「怒ったワケじゃないんです……ただ、恥ずかしかっただけで……」
そう真っ赤な顔をして目を閉じる私をみながら、まぁ、別にいーじゃん?そう英二くんは話を続ける。
「ネコの名前はともかく、オレ、小宮山の気持ちなんてとっくに知ってんだしさ?」
後頭部で腕を組んでそんな風に言う彼に、そう言う問題じゃありません……そうますます熱くなる顔を横に向けてそう呟いた。
「何?他人に言われたのが嫌だったとか?なんなら自分で告る?だったら聞くよん?」
そんなとんでもないこと、まるで何でもないことのようにサラッと言う彼に胸が切なくなった。
泣きそうになるのを精一杯の笑顔で誤魔化すと、……告りませんよ、そう言って足元を見つめた。
彼への想いを口にしたら、すべてが終わってしまうようなそんな気がして、自分の気持ちを決して口にしないと心に決めたから……
例え彼に知られているとわかっていても、自分の声で彼に伝えるのとではその重みが全然違うから……
そんな私をチラッと見た英二くんは、ふーん……とだけ言って空を仰いだ。