第81章 【ゲンジツトウヒ】
……芽衣子ちゃん……!?
ハァーっと大きなため息にハッとして顔を上げると、ねーちゃんがオレを冷たい目で見ていて、まさか二股じゃないでしょうね?、そう低い声で問いかけるから、……違う、短く否定して目を伏せる。
「……そう、あんたがめん食いで、飽き性だってことは分かったわ……」
そりゃ、ねーちゃんは呆れもするよな……
オレ、小宮山と別れたなんて言ってないし、突然、他の女が彼女だって言って尋ねて来たらさ……
あんな大騒ぎして、過去もすべてさらけ出して小宮山と付き合いだしたってのに、あっさり芽衣子ちゃんに乗り換えて……
せっかく他人の子ども引き取って育てたって、こんなどうしようもないやつに育っただなんて、とーちゃんだって、かーちゃんだって、ガッカリして後悔するよな……
まぁ、それを言ったら、あんなところに出入りしてた段階でそうなんだけど、なんて思いながら、憂鬱な気持ちで階段を登る。
それにしたって、なんで芽衣子ちゃんが家にまでくんだよって思って、だいたい、家の場所、なんで知ってんだよってため息をついて……
まあ、この公園の近くっては言ってたし、光丘なのも知ってれば、あとは「菊丸」なんて苗字、うちくらいだから簡単に探し出せるけどさ……
本当に芽衣子ちゃんは積極的で、毎日教室に迎えに来たり、家まで押しかけてきたり、小宮山じゃ絶対考えらんないことばかりで、正直、その積極的なところが、引っ掻き回されているようで……
まぁ、小宮山も突然家にきたことあったけど、あれは不二の差し金だったし……
って、さすがに昨日は、あんな形で約束ドタキャンしちゃったし、んなふうに思っちゃ、悪いよな……
芽衣子ちゃんだって、心配して来てくれたんだろうし……
自身の部屋の前に来ると、すうーっと深呼吸をして、それから気持ちを切り替える。
ガチャっと勢いよくドアを開けると、芽衣子ちゃん来てたのー?、よく家、分かったねー、そう、なんでもないことのように笑顔を向けた。