第81章 【ゲンジツトウヒ】
1人、ガランとしたラブホを後にする。
自宅までの長い時間は胸の中が虚無感でいっぱいで……
いや、本当、オレがこんな気持ちになる資格はないんだけど……
でも、そんな気持ちを止めることができなくて……
何度も携帯を取り出して小宮山のLINEを確認した。
でもやっぱ、なんのメッセージもなくて、本当になんも言わないつもりなんだなってその度に思い知らされて、それから押し寄せる胸の痛みを止めるとができなくて……
空を仰いで、溢れる涙を必死にこらえた……
「おかえり、英二」
「……た、だだいま、ねーちゃん……」
自宅の鍵をそーっと開けて、音を立てないようにドアを閉めた途端、家の中からねーちゃんの声がして、ひいっ!なんて思いながら恐る恐る返事をする。
目の前には恐ろしい顔で仁王立ちしている下のねーちゃん……
それはまるで、オレが帰ってくるのを待ち構えていたかのよう……
もしかして、嘘ついて外泊したの、バレてる……?
夏休み、大石の家に泊まるって言って小宮山の家に泊まり込んでたのがバレて「嘘ついて外泊なんてもっての外」そうかーちゃんに釘を刺された。
芽衣子ちゃんの家に泊まるときは、いつもバイト仲間んとこに泊まるって言っていて、芽衣子ちゃんは確かにバイト仲間だから、決して嘘ではないんだけど、やっぱり本当は違うわけで……
しかも昨日は、結局、小宮山とラブホに泊まったから、完全に嘘になっちゃったわけで……
また嘘ついてんのがバレたら、さすがにヤバイよな……
そう心臓をバクバクさせながら、どったの、ねーちゃん……?、なんて作った笑顔をひきつらせる。
「……あんたの彼女って子、来てるわよ?」
怒られる、そう覚悟を決めたオレの耳に聞こえて来たのは、予想外のねーちゃんの言葉……
彼女……?、目を見開いて、足元を見ると、そこには確かに見覚えのある靴がキチンと揃えて置かれていた。