第81章 【ゲンジツトウヒ】
「でも、心配してくれて、本当に嬉しかったです……ありがとうございました」
本当にありがとう……美沙が英二くんに連絡をしてくれたから、私、最後までされずに済んだよ……
心からの私の感謝の言葉、本当のことは言えないけれど、この気持ちは嘘じゃないから……
『それならいいんだけど……じゃあ、余計なことしちゃったかな……嫌だったよね……?』
英二をよんじゃって……、そう気まずそうに言う美沙に、別にそんなことないですよ!、そう平気な声で返事をする。
別に普通でしたし、気にしないでくださいね、そうは言ったけれど、決して普通ではなくて……
月曜日、英二くんと教室でどんな顔して会ったらいいかわからなくて……
美沙と通話を終わらせると、ふわぁ、大きなあくびをしてベッドに潜り込む。
少し寝よう……本当に疲れた……
心配事も、悩み事も、嫌なことも、辛いことも、色々いっぱいでグチャグチャだけど……
グチャグチャだからこそ、全部、忘れて寝てしまいたい……
例えそれが、一時しのぎの現実逃避だとしても____
ピョンとベッドに飛び乗ってきたネコ丸が、チョイチョイと布団の先を手で突っついて催促する。
はい、どうぞ?、布団をめくると、待ってましたとばかりに潜り込んで、腕の中にすっぽり収まり丸くなる。
すぐにゴロゴロと喉を鳴らすその音を聞きながら、全てを忘れて眠りに入る。
ネコ丸……一緒にいてくれて、ありがとう……
そう呟いて目を閉じると、ポロリと涙が頬を伝う。
いつものようにネコ丸は、その涙を舐めとり慰めてくれた。