第81章 【ゲンジツトウヒ】
始発に乗って青春台の駅に着くと、コインロッカーに預けていた制服を取り出して、駅のトイレで着替えを済ませる。
英二くんが用意してくれた服は、とてもじゃないけれど着て歩くには恥ずかしすぎて……
だって胸は大きく開いて谷間が強調されているし、その胸元からはこれまた用意してもらった、見てるだけで恥ずかしくなるような、レースのブラが見え隠れしていて……
本当は朝、それを着ようかすごく迷った。
それは昨日、お風呂上がりにその下着を見たときも同じ気持ちで、はっきり言って機能的にどのくらいの意味があるのかわからないそれを着けるのは、どうしても抵抗があって……
でも、あの男たちに触られたと思うと、もともとのを着ける気にはならないし、第一、ショーツやスカートは洗濯しないと履けるような状態じゃなかったから、結局、他に選択肢はなくて……
制服で帰るのも変だけど、さすがにこの服じゃ、お母さん、びっくりしちゃうもんね……
標準仕様の自分の制服はどこか安心感があって、ずっとメチャクチャだった心が少しだけ落ち着いた気がした。
自宅に着くと玄関先でしばらく戸惑う。
昨日は美沙の家に泊まったことになっているのに、こんなに朝早く帰ってきたら、お母さん、不審に思うよね・・・?
なんて言い訳しよう……いくら嘘はつきたくないって言ったって、まさか本当のことなんて言えないし……
そもそも、美沙の家に泊まってないの、バレてないよね……?
お母さんからはなんの連絡もなかったし……
わざとではないにしても、友達の家に泊まりに行くと言っておいて、本当は好きな人と一晩を過ごしてしまったこの状況に、やっぱり後ろめたさは拭えなくて……
結局、しばらくウロウロしたところで、良い考えなんか浮かばなくて、下手な嘘ついたってお母さんには通じないことくらい分かっていて、普段通り、なんでもない顔をして帰ろう、そう覚悟を決めて家の鍵を静かに開けた。
「……タダイマ……デス……」
って、全然、普段通りじゃないじゃないの……!
自分の挙動不審振りに頭を抱えると、……璃音?、そうキッチンから母が驚いた様子で駆けつける。
そんな母に気まずく思いながらも、ただいま、そう今度こそいつも通りの笑顔を向けた。